No.693 大本営発表を越えて

 ワールドカップ連覇を目指した女子サッカーなでしこジャパンが見事準優勝を達成しました。体の小さい日本人が接触プレーのあるボールスポーツで上位に進むのは本当に大変なことのようです。その中で、前回ドイツWC、ロンドンオリンピック、今回カナダWCと3回続けて決勝に進んだことは大変な偉業です。前回大会からほとんどメンバーが変わらず他国から分析され尽くした今回のチーム、大会前には良くてベスト8止まりで、場合によっては予選リーグ落ちでもおかしくないというのがサッカー好きの定評でした。ところが試合が進むと共に新しいチームプレーが力を増し、運を引きよせるまでの実力を発揮しました。本当にその努力に感服するとともに、僕たちに自信を与えてくれました。

 そうしたすごみを矮小化してしまったのはマスコミです。大会前の時点で、日本のチームは世界的に見て厳しい状況にあるという客観的な情報が大手のマスコミからほとんど伝えられませんでした。テレビ局は最初から連覇の可能性、オリンピックのリベンジ、と煽っていました。悪い情報は伝えないというのは、東日本大震災での政府発表や太平洋戦争中の大本営発表を連想させます。

 だからといって、マスコミや政府や大本営に悪意があるというわけではなさそうです。何か悪いことの予感を口に出してしまうと実現してしまうかもしれないという思いが、僕たちの心の中には常にあります。一昔前まで本人にはガンの告知をせずに、伴侶にだけ告げられたのも同じような思いがあったからでしょう。自分の親に認知症の兆候が出たとしても、それを認めるのははばかられるものです。一概にマスコミだけを攻められません。

 預言するとそれが実現してしまうと考えるのは日本だけではなく、悪い未来を予想した者はその言葉だけでしばしば殺されていました。しかし、かといって事実を客観的に見つめなければ、僕たちはまた太平洋戦争の過ちを繰り返してしまうことになります。欧米の人が縁起の悪さを乗り越えて冷静に短所や現実を見据えることができ、日本ではそれが難しいとすれば、日本の将来は運頼みの人任せのものとなってしまいます。

 欧米の近代が自分たちの短所を見据える背景には、一つには進歩の思想、もう一つには心の強さがあるように思います。より良い変化を期待し実現するには、現状を厳しく見つめ、何が原因かを正確に知ることが必要です。経営学では計画とコントロールと言います。この原因解明が甘い見通しに基づいていると、大災害に直結します。そして、どんなに客観視した現状が厳しくても、理想をあきらめない断固たる決意、心の強さがないと、解明した原因を乗り越えることが出来ません。こう考えると、少なくともサッカーでは、男子より女子の方が、マスコミの希望的観測に流されず客観的に自分たちの問題を見つめ、かつ断固たる決意で、世にもまれな三大会連続決勝出場を成し遂げたといえます。

 アメリカでの女子WC決勝視聴率は、サッカーとしては男子WCを越え過去最高の26.7百万人となりました。しなやかに多くの人に届く力は、今後の女性経営者の活躍を期待させるものともいえます。 (岩崎)

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