No.708 いすみ鉄道 鳥塚社長講演

 去る9月12日に行われた朝日大学公開講座から、”いすみ鉄道鳥塚社長講演の概要をお伝えします。 

 

 皆さんこんにちは、いすみ鉄道の鳥塚です、千葉県からやってきました。

 岐阜県は旧国鉄を引き継いだ第三セクターが3路線ありまして、どれも大切にされていて、とても優しい県だなと思います。地域や自治体によっては、こんなものいらないと言っているところがあります。いつも言われているのが私です。

 いすみ鉄道は春先には菜の花の中を走る鉄道です。千葉県の花が菜の花で、それに合わせて、黄色い車両を走らせています。千葉県は房総半島という太平洋に面した半島にあって、外房海岸の大原から内陸に向かって途中の大多喜町に本社があって、養老渓谷まで26.8Km の鉄道です。

 地域の足として経営するには、30Km位の路線の運営には約10万人の人口が必要と言われ、いすみ鉄道沿線は合わせても3万人いないので、マーケティング的には、鉄道が成り立つベースは無いのです。

 第三セクター鉄道は、国鉄民営化の時にバス転換という国の方針に反して地域が引き受けたので、国は県市町にお前たちやりなさいといって一切補助を出さない、自治体が出しているお金は、年に数千万円。年によって異なるがこの負担金が重くて手放したい。

 私がいすみ鉄道について考えたのは、ローカル線をテレビで放送すると視聴率がガーンと上がる。ローカル線を雑誌が特集すると売り上げが上がるのです。なぜか、それは、都会の人たちが見るからです。田舎の人はスカイツリーの番組は見るが、ローカル線の番組は見ません。誰が見ているのか、マニアだけではガーンと視聴率は上がりません、ローカル線に都会の人たちは憧れを持っているのです。私はここにマーケットが存在すると考えたわけで、それで航空会社やめちゃって、馬鹿者と言われているわけです。

 今、ローカル線に乗っている人たちは、本当にローカル線が必要な人です。けれど、地域の足を守れ、税金投入だ、補助金を入れろというようなやり方では、もうコンセンサスが得られません。バスでいいだろうになってしまうのです。

 男の隠れ家という雑誌に、いすみ鉄道が特集されました。こういう雑誌に特集されるほど、ローカル線は人気があるのです。だけれど地域の人は理解できない、解らなくても、国鉄や国がいらないといって捨てたものを、なにくそと言って立ち上がった地元の人たちですから一生懸命なのです。皆が集まって駅を掃除したり、花を飾ったりしている、何でと聞くと、だって駅は町の玄関口でしょ、玄関が汚かったらお客さんが来たら恥ずかしいでしょ。でも、お客さんなんて来ないですよ。町が廃れているから、だけれど、二十数年間駅をきれいにしてきた人たちは、このまま鉄道が廃止になったらどうなります。私は私利私欲でなく、頑張ってきたこの人たちの努力が報われない世の中になってしまったらどうなります。そういう国だったらそれは間違っている。だから、私はそういう人たちを、喜ばしてあげようと思ったのです。鉄道会社の再生が一番なのですが、この人たちと一緒にいすみ鉄道を守ってきて良かったねという思いをしてもらおうと思ったので、この会社を引き受けたのです。

 人を呼ぶのに一番簡単なのは、蒸気機関車です、蒸気機関車走らせれば必ずお客さん来ます。だけれど、初期投資5億円かかります。年間維持費5,000万円かかります。これ商売になりません。初めにやったのがムーミン鉄道です、シール貼っただけです。シール貼っただけで、観光鉄道ですって言ったのです。2009年10月、すぐにテレビが旅番組この秋乗りたいローカル線の旅、黄色い車両にシール貼って、ムーミン列車ですって言ったらテレビが来ました。

 これ、オズマガジンという雑誌ですけれど、「カワイイ電車の旅」という特集してくれる。婦人雑誌の編集者は、東京のど真ん中にいて世界中にアンテナを張り巡らしている人たちです。そういう人たちから見たら「ローカル線」特集組めるね、いすみ鉄道当然表紙でしょう。これが、東京の都会人のものの考え方、だけれど、この時にローカル線を扱っている地元の自治体では、そんなものいらない、捨てようと言っていたわけです。このギャップに気が付かないとだめ。なぜならお客さんは東京の人、都会の人です。それで、駅に本当に観光客が来るようになったわけですよ。

 田舎の魅力を引き出す方法として始めたレストラン列車。房総半島大原漁港は伊勢海老で、漁獲高が日本一です、でも地元の人知らない。千葉県は地元で取れたものをみんな東京に送って食べてきた。でもいつまでもそうはいかない、地元で付加価値を付けて「伊勢海老特急」を作った。特急じゃないですよ、各駅停車ですから、でも伊勢海老食べながら特に急がないでしょう列車、料金13,000円。土曜日がイタリアン、日曜日はおさしみ列車2人で25,000円もっとハードルが高いです。

 田舎の思い出が無い、都会の思い出だけの子供が増えています。そんな子供が次の時代を作っていったらどうなります。そのために1万円以上のお客さんに乗ってもらってキャッシュフローでなんとか食いつないで、いろいろ考えているわけで、本当です。これが田舎の景色、良いでしょう、いらないですか、なにも特別な歴史的なものが無くても、これでローカル線が走って、のどかな田舎の風景が残っている。ローカル線が残っていることが価値だし、田舎の価値。都会人が求めるものを提供できることが大切だと思います。

 ローカル線を知っている子供が数十年後にあの田舎良かったな、ローカル線良かったなと、そういう思い出を持っている大人たちがいることが大切。そうでなければこの国は、新幹線と高速道路だけの国になってしまう、アメリカ型経済の中では田舎なんかいらないことになってしまう。そう思って私は一生懸命ローカル線を守る仕事をしています。

 岐阜県は3つの第三セクターを維持している行政の人は大変だと思います、何千万ものお金をつぎ込み地域の足を確保するために努力されていて、だけれど観光宣伝費と考えれば安いものですよ。観光のお客様がたくさん来て、地元の足が守られ、その上で観光宣伝の効果がでればいいわけです。ぜひ岐阜県の人も年に一度はそれぞれの鉄道に乗りに行きましょう。そうすると見えてくるものがあります。自動車の窓から見えるものと、列車の窓から見えるものは違います、違う景色が見えるんです。ぜひ地域のローカル線を大切にしてください。と言って鳥塚社長のお話は終わりました。

 鳥塚社長のすべてが共感できるお話でした。私は岐阜県のエコツーリズムの経営をサポートする仕事をさせていただいています。岐阜の自然を案内するインタープリターの人たちは、都会の人たちが自然は素晴らしいと言うので、岐阜の自然が素晴らしいことは知っています。しかし、手付かずの自然が良いと思っています。

 しかし、私は「岐阜の宝もの」などの場所で、観光客の行動を調査して、彼らが本当に美しいと思っているのは手付かずの自然よりも、日本の原風景としての里山を美しいと思っている人方が多かったのです。そのことは鳥塚社長のお話と通じています。懐かしい里山の風景に都会の人たちは憧れ、行ってみたい、見てみたいという力を持っていることを地元の人に強く伝えようと思いました。 (田村)

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