No.714 言葉にできない

生きていると何回か、言葉にできない体験をします。初恋、全力を尽くした部活動での晴れ舞台、失恋、結婚式、身内との諍い、仕事の成功、上司との確執、子供の誕生、子供の挫折、地域との関わり、病気と別れ、様々です。その都度、誤解を解くためにも将来のためにも、その感覚を何とかとどめようと言葉を探しますが、適切な表現をみつけられず時とともに感覚も失われていきます。僕たちとともに歌があるのは、消えていた記憶を言葉で復元してくれるからかもしれません。

「あなたに会えて ほんとうによかった 嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない」という歌があります。が、体験を何とか無理して綴ることができると二つ良いことがあります。一つは自分の感覚を生み出した動機、自らの内側が探れること、もう一つは出会えた相手に言葉で伝えることで相手にも気づきが生まれ、それが自分に戻ってさらに一歩進んだ関係や、すばらしい発見が生まれることです。

アクティブラーニングとして学生4名が地元の印刷会社コームラ様の助けを借り、地域で爆発的売れ行きの魅力あふれるタオルや繊維素材を生み出している浅野撚糸様の広報パンフを作成する機会に恵まれました。パンフの出来はもちろんプロの仕事には遠く及びません。ただ優れた経営者と組織のメンバーに触れられたという学生が感じた驚き、喜び、そしてその気持ちを何とか形にしようという言語化と視覚化への思いが、発表会に参加した他の人々にも伝わってきました。

「世界一」のようなプロでは怖くて使えない表現に交じっていた、「まるで生きているような魔法のタオル」という表現は、宣伝のプロとの仕事が多い浅野社長も思いつかなかった、次回のテレビショッピングで使ってみたいとのことでした。このような社長からのフィードバックは、経験できた感動から表現を考えた学生にとって自信になるだけでなく、さらに深く自分の感覚を伝えようとの意欲を生み、表現力という技術を高めるでしょう。

商品そのもののみならず会社の社風として、社長が社員の夢をかなえようと努めていることを社員が感じ取って行動していることも、社員の声として学生は織り込みました。パンフは企業の採用活動の補助として作成されていますので、就職を検討している学生に会社の雰囲気が伝わるだけでなく、社風を当たり前としてあまり意識していない社員にも、改めて良さとして認識され、社内の良好な相互作用の循環を生むでしょう。このような手法は、1980年代経営が悪化していた米国のBank of Americaが、自社の隠れたよさをアピールする社員向けテレビコマーシャルを流した例が有名です。

言葉にできないことを言葉にすると、そこから人間同士の良い相互作用が思わぬ宝物を生み出すことがあります。言葉にできないことを経験したら、大きなチャンスが巡ってきているのです。 (岩崎)

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