No.721 ホントは勉強したい

 還暦の誕生日に起業家論を受講した学生から予想外の誕生日プレゼントをもらいました。多くの学生のホンネは、勉強したいと思っていること、ただ学修のやり方や練習方法を知らずあきらめていることに気がつかせてくれるレポートの束です。この授業で何を身につけたかを論理的に書けという最終回の課題に、起業のなりたちと起業家の精神を学んだという想定通りの主張と同時に、半数近くの学生が、自分の考えを伝える難しさと重要さ、苦手だった文章、レポートの具体的な書き方まとめ方、自分の考えに説得力を持たせる方法等が身についたと答えてくれました。今まで小論文やレポートと言えば、マス目を埋めることしか考えていなかったというのです。

 当初授業は、理論的解説をして映像や裏話などで起業家の素顔にせまり、理論の切れ味を実感してもらう形で進めようと思っていました。ところが2回目の授業後のレポートから、好き嫌いしか書かれていなかったり、説明とまったく関係ない話を書いたりする学生が続出、感想欄にもよく分からない、毎回書くのは嫌だというコメントが散見されました。現実を論理の因果関係で追って理解することは想像していたより苦手のようでした。

 このため起業家の説得力がどこから来ているのかを解説する部分に重点を置いて理論のウエイトを落とし、課題として授業に関係する文章の構造を見る練習問題を解いてもらいました。これを数回行った後、短い文章で自分の主張の文と、その根拠となる論理の筋道や事実を書いた文を分けて書く課題に進むと数回で多くの学生が短文での論理展開に慣れてきました。この間、起業家実例のDVD等で学生の興味を維持しつつ、彼らが使った説得術と起業に必要な知識や技術を解説し課題は添削します。最後の4回は、ある起業家の成功と挫折を10ページほどのケーススタディを読み込みます。ケースで分かったことをその起業家に成り代わってビジネスコンセプトとして要約し、コンセプトに自らつっこみをいれて、その部分を具体的に論理の筋道や事実で説明する課題をこなしました。ケーススタディの数字を簡単な作業で加工すると、説得力のあるデータを導けることなどです。

 あれだけ嫌がっていた体育会の猛者もある程度ロジカルに課題を書けるようになり「文を簡潔にまとめる練習などをしてそのおかげで、文の構成がまともになってきた。この大学生活で良い文がつくれるようになりたい。」「今まではただつらつら書いていたが、形を知ってそれを意識して他のレポートも書いていたら、普段何気ない文も結論から述べる癖がつき始めた。」とうれしそうに書いてくれてはじめて、学生が何を求めていたのかを知りました。教員になって久しぶりに感じる大きな手応えです。

イノベーションの機会はアイデアより予期せぬ成功や失敗であるとしたドラッカーを教えているのですから、この予期せぬ機会を来年はさらに深めなければうそを教えたことになります。主張のやり方を学んだ後なら70人でのケーススタディ授業も可能かなと感じています。あ、主語を意識することが大切との教えを皆が守ってくれた結果、私は、私はと常に書くレポートが増えた点の修正もしないと。  (岩崎)

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