No.724 良い心配、良い希望

 ヨーロッパへの難民の流入、急激な円高、世界同時株安、北朝鮮のミサイル発射、ジカ熱の流行、去年から今年にかけて何かと世間が騒がしい時期に入ったように見えます。大きな心配はつきませんが、これらは個人では解決できないことです。大学生の心配事といえば、恋人や友達、クラブのことといった身近な事が多いと思いますが、実は本当に心配しなくてはいけないことがあります。それは、自分の意志で生活のペースを決められているかという、ごく当たり前のことです。

 僕の大学時代にも何人かの知り合いが卒業しませんでした。もちろんスティーブ・ジョブズのように挑戦のため大学を辞めた人もいます。しかしその多くは高校までと同じ気持ちで大学時代を過ごし就活をすれば社会人になれると考えていた人たちです。いつのまにか、授業に出なくなり、単位を取り損ね、ますます大学の敷居が高くなった人たちです。クラブに熱中しすぎた人は自分で選んだ意識がありますのでその気になれば戻ってこられますが、知らず知らずに大学から離れた人はなかなか戻ってこられません。

 特にパチンコ等の高い時給に惹かれてアルバイトをはじめた人は、要注意です。効率的に生活費も遊びの費用も稼げると思うのでしょうが、深夜きつい仕事が終わって誘われる先輩からの飲み会の誘いを断れません。割高なバイト料だからまあいいや、となるのが普通です。心理的に人間は楽して稼いだお金の使い方が荒くなるようにできています。経済学では「心の会計」といいます。結果、自分の意図とは関係なく生活パターンが乱れ大学に居づらくなります。目先の数百円の時給に目がくらんで、1億円以上の将来収入を捨てることにもなります。

 安定した状況に入ったと思えるときにこそ、実は大きな落とし穴が潜んでいるのは将来社会人になっても同じです。公務員や大きな会社に就職して良かったと思えばその瞬間から「心の会計」が働きだし、いつの間にか人生が大きく下ぶれする可能性が広がります。安定した生活の維持には常に努力が必要という良い不安を持ちつつ、自分の意志で何かに取り組んでいるという良い希望を持っていないと生活の張りを維持できません。

 明治神宮の森を、百年前に今の姿を予想して計画した農林学者の本多静六氏は、サラリーマンとしてどう将来に備えたら良いか日本で最初に考え成功した人でもありました。彼は月給の四分の一と臨時収入をすべて貯蓄していました。好景気時にはこのように元手を貯め、不景気時には思い切った、しかし自らの専門知識から比較的安全と判断できる投資を行うことを勧め自ら何回も財産を築きました。戦争の不安に駆られる時代であっても、そのためにはサラリーマンが収入を得る上でも知識を得る上でも最も恵まれた職業だと考えていたのです。日々に安住するのではなく、自らの専門知識を磨く場として会社で仕事に励む。会社の大、小が本当の不安ではないのです。 (岩崎)

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