No.727 社交ベタ? ベタ社交?

 日本のビジネス社会での接待は、なかなか学校では教えづらいテーマだと思っていました。しかし、物語の達人ジェフリー・アーチャーが100年にわたるイギリス人一家の変遷を描いた「クリフトン年代記第4部」を読んで、はっとしました。1960年代に社会に出たばかりのイギリスの若者がソニーの創業者盛田昭夫さんを苦労して接待する話がでてきます。自分が社会に出て初めて接待の準備をさせられた時にそっくりで、ああ接待は世界共通なのだと改めて知りました。

 接待のポイントは高価な料理やプレゼントではなく、相手に深い関心と共感を持つことと、そのために十分事前に情報を集め、相手にとって忘れられない思い出を共に築くことです。新入社員時代支店長に命じられ、数量限定の特別な菓子を遠くまで買いに並ばされたときや、その後の接待でおみやげを手配したあとおまえは何も考えずに仕事をしていると叱られた時、みやげのどこが仕事なのかまったく理解できなかった自分を思い出します。接待、いや社交ということを、学校でも家庭でも習ったことはありませんでした。

 プレゼントに心を込めることは誰でも知っていますが、なかなか実践できません。同じく知らない人と親しみを持って話す重要性も分かってはいても、行うは難し、です。空気を読むベテランのはずの日本人なのに、海外では日本人は社交ベタとよく言われます。語学ができないからと勘違いしている人もいますが、実は「社交」を小さいときから身につける習慣がないことが、語学よりも大きく影響しているような気がします。僕の奥さんのように誰とでも話ができる性格の人もいます。日本では人見知りの若者も許してもらえますが、欧米では社会は社交する場所との意味もあるとおり、社交する技術がなければ、社会参加できないと考えられているようです。ハリーポッターやアメリカの学園ドラマでうらやましく思えた卒業パーティも、社交ベタにとっては地獄の時間となります。

 そこで小さいときから身につけるのがものおじしない挨拶ですし、スモールトークと呼ばれる天気や出身の話、そして気の利いたジョークです。ショー・アンド・テルと呼ばれる自分語りのスピーチも小学校から行います。ベタ社交を身につけるのです。そして、この社交が上級レベルになると相手の共感を得る接待として結実します。この点は日本のプロビジネスマンと変わりありませんが、そこに至る経路がまるで違うようです。日本のプロビジネスマンの多くは仕事でしか社交の技術を使いませんが(僕もそうでよく家族から叱られました)、彼らは普段の生活、社会の中で社交の技術を常に使います。

 社交の真の目的は、新しい情報を得ることです。社交の技術があれば、知らない人から情報を得ることができます。伊藤博文は、「象を知るのにドイツ人は図書館に行き、フランス人は動物園に行き、イギリス人はインドに行く。一番学び方を知っているのはイギリス人だ。」と語ったそうです。現場で情報に近づける社交の技術は生き抜く知恵を得る手段であり、人見知りな大学生にとってベタ社交を磨く良い機会が就活です。ある種のパターンを覚えることがベタ社交の入り口で、繰り返せば誰でも上達するし、心理的負担もなくなります。 (岩崎)

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