No.731 ポスターとデザイン

 授業でポスターやPOPなどの画像作品の制作を教えています。この授業で、絵やデザインが好きで小さな時から自分でお絵書きをしていた、特に女子学生に多いのですが、出来上がった作品を指導しようとすると、驚くように強く反発する学生がいます。

 このタイプの学生は、自分のデザインに関する世界観が出来上がっていて、先生であっても自分の世界に踏み込んで批判されることを嫌う傾向が強いのです。

 自分が好きな世界観を持つことは、デザイナーにとって、とても必要なことだと私も思っています。そして、美意識は主観的なものであり、個人の感性で判断するものです。しかし、自分が美しいと感じても、他人は違うことを言うことはよくあることです。

 他人の言うことを気にしすぎるなど、新しいデザインを客観的な感覚で創ることができるとは考えられません。そんなことをしたら、デザイナーたちは毎日悩み狂って、他人はどの様に評価するのか、どう見られるのかということだけで、一歩も前に進めなくなって何も書けなくなってしまうでしょう。

 しかし、実際の職業としてのデザイナーの仕事ではどうでしょう。デザイナーは、依頼主であるクライアントからポスターの主旨やコンセプトなどの情報を得てデザイン案を作成します。よほどの大物デザイナーでない限り、このデザイン案はいろいろと批判され修正を要求されます。若手のデザイン案が一発OKをもらえることは殆どありません。少なくとも、私が以前いた職場ではそうでした。そうすると、ほとんどのデザイナーたちは、ぶつぶつ言いたいことはたくさん有るのですが、言われたように、でも少し自己主張を入れながら修正案を作成していました。

 デザインのほとんどすべてが、依頼主であるクライアントの発注で制作されますから、デザイナーの主観だけで作られ作品が一発でクライアント要求を満足させるのは大変なことだともいえます。

 ある程度経験を積んだデザイナーであれば、一般の人たちに伝えるためのクライアント説得のテクニックを心得ていますが、若手では難しいことです。人によってはクライアントとケンカになって、二度と仕事が貰えなくなってしまうかもしれません。どんなにクライアントからクレームを言われても、いただいた仕事は大切に、新しい作品を提案し続けるには、自分の作品はこんなに素晴らしいのに、凡人たちは分ってくれないと、何の裏付けが無くても大きな自信を持つことが必要かもしれません。

 絵画の世界で、天才と言われるゴッホも、生前に売れた絵はたった1枚であったと言われ、弟の援助だけの貧しい生活だったかもしれませんが、好きな絵を自分の感性だけで書き続け才能を開花させ一生を終えたと言われています。

 デザインの仕事は、他人からの干渉をすべて拒否して、自分の世界だけに浸っていることが許される職業ではないのです。他人から言われたくないのなら趣味で続けるしかありません。 (田村)

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