No.736 政治参加の必要・十分条件

 先日の金融論の授業での学生とのやりとりから金融の考え方が色々な分野に応用が利くかも知れないことに気づかされました。最近6月から施行される18歳選挙権から、若者の政治参加が話題になっています。お役所はかっこよい若者が投票に行くイメージ作りを先行させています。真面目な人は、若者が投票に行かなければ若者向けの政策は実現できないから若者にとって損だ、と若者の説得を試みています。でもちょっと見では民主主義とは多数決ですから、団塊の世代の数が圧倒的に多い時代に若者の投票率が向上しても、若者の将来を考えた政策より老人の今を考えた政策の方が通りやすくなる可能性は高そうです。だったら選挙権年齢を引き下げ、投票率をあげることは無駄なのでしょうか? そうではないことが、金融取引が起こる必要・十分条件を考えるとはっきり理解できます。

 金融取引とは、現在のお金と「将来時点でお金を提供する約束」の交換の約束のことです。政治家は将来こういう政策を実現すると宣言して投票を求めますので、現在の投票と「将来時点で政策を実現する約束」の交換とほぼ同じ行為になります。ではお金を貸す金融機関は金融取引ができるための必要条件として何を考えているか? 将来お金を返してくれる約束を履行してくれることが確からしいかどうか、です。確からしいと思えばお金を貸します。ではどうやって確からしさを確かめるのか? 

 そのためには、借りたお金の使途、その返済が可能になる収益の見通し、経営者の人がら、会社の評判、担保等を確認し、貸している間ずっと確認し続けます。こうすることによって、約束が守られないリスクを管理しています。このようなチェックはお金を貸した貸し手自身のためのようにも見えますが、逆にお金を借りた企業や、お金を借りなかった他の企業が将来誠実に行動していればお金を借りられる可能性を守るという意味で、借り手の為にもなっています。世の中の役に立っているのです。これを政治に当てはめると、選挙で誰かをチェックした上で投票する行為を続けるというのは、将来の政策を実現する約束への貸し手となったとも言えます。つまり投票することで、団塊の世代を代表している候補者でも、誠実に自分たちの子供を考えて行動する誘因(インセンティブ)を与えることになるだけでなく、若者の利益を代弁しようとする議員を支えることにもなります。

 では、金融取引の十分条件は何でしょうか? 金融取引の貸し手が借り手になることです。今銀行預金には貸越機能がついていますが、これがそれです。銀行という貸し手が、同時に預金という借り手になっていますから、誰に対しても約束の確からしさを確かめることなく、お金が貸せます(審査がありません)。政治に当てはめれば、若者の立候補者が当選して初めて政治参加の必要・十分条件が満たされることになります。

 金融取引の必要条件が満たされないと経済は衰退します。政治参加の必要条件が満たされないと、やはり怖いことが起こることを歴史が証明しています。 (岩崎)

関連記事

  1. No.716 赤ちゃんの行動と深層心理

  2. No.831 早朝、深夜の買い物と消費行動に関するマーケティングデータ⑧

  3. No.806 次の人類

  4. No.719 赤ちゃんの能力と成長

  5. No.720 付き添い消費に関するデータ③

  6. No.703 AIと仕事

  7. No.747 かきりんがくる(番外編) 麒麟がきつつある!

  8. No.735 都市の発展と景観

  9. No.740 「なじみの店・行きつけの店」を継続利用した理由

最近の記事