No.740 HUNTER×HUNTERのチーム

 いつも授業でやるミニ課題の質問意見欄で、「HUNTER×HUNTER最新刊が6月3日発売です。」と複数の学生が教えてくれました。ちょうど大学の教員に転職した頃、小学生だった娘がはまっていたのを取りあげて読んで以来、このマンガに魅せられています。ゴンという12歳の少年が父親を捜すファンタジーです。仲間と出会い自分の長所を磨きながら、社会という冒険に出発しようというメッセージが、子供マンガ風であると同時に巧みな画面構成で小学生でも理解できるように書かれた成長物語でもあります。

 同時に人と人との関わり方や生きる意味、社会での行動や大人の交渉についても描かれており大学生以上の大人にとっては深く物事を考えるきっかけにもなります。何とかビジネスの面白さを学生に伝えたいと考えていた時期に出会ったので、「あらゆる残酷な空想に耐えておけ、現実は突然無慈悲になるものだから。」「正解への道が険しく危ないほど、馬鹿と利口両方兼ね備えてねェと前へ進めなくなる。」「このゲーム(世界)でアイテムをゲットする方法は3つ(発見、交換、奪取)」「相手が「もう帰ってくれ」って言ってからが本当の商談だぜ」等の台詞は、授業でも時々引用しています。

 組織についても作者が様々な思考実験をしてくれます。組織とは人が協働して効率的に物事を処理する達成欲求を満足させる仕組みであると同時に、仲間との親和欲求を満足させる場でもあります。登場するクモという盗賊団は、仲間を捨ててでも組織を再生するか、組織の目的を捨ててでも仲間である団長を助けるかでもめます。作中このテーマは繰り返しで取り上げられます。そして、ついに達成欲求と親和欲求を両方満たす強い組織同士の生存を賭けた戦いが、エイリアンと人間の対決として描かれ、非人間的な手段で達成欲求を満たすのが、善であるべき人間側であることが語られます。相手を絶対の悪としてしか闘えない人間同士の業を感じさせます。

 ビジネスを戦いの類推で語ることは極めて的外れですが、達成意欲と親和意欲を両方満たす組織が今日本でも世界でもビジネスでは求められています。分業や階層性だけでは達成できない成果が「チーム」としての一体感から生まれます。「チーム」が成功するためには、1.各自の技術的専門スキルがしっかりしていて(各自がそれぞれ強みを持っていて)、2.問題解決のスキルがあり(なぜとの問いかけを繰り返せる)、3.人間関係のスキルがある(徹底してぶつかり合っても壊れない関係がある)ことが条件です。HUNTER×HUNTERを読むことで、こうしたチームへのあこがれを感じられます。

 学生が就職で想像している職場組織は達成欲求中心でその歯車となるイメージですが、働いている現場の大人が実感として大切にしているのは、親和欲求のほうです。是非両方を満たす就職先をこの機会に探し出してください。君の冒険のために。 (岩崎)

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