No.755 本気で考える

 東京都の魚市場豊洲移転での無責任、民進党代表戦での過去の発言を無視した説明、富山市議の連続辞職問題での破廉恥と社会の信頼性を揺るがす事件が続いています。経済面でも三菱自動車が燃費データ再測定で不正を繰り返す等オトナは信用できないと憂鬱な学生もいるでしょう。日本でなぜこのような不信感を招く事件が多発するのか、どうしたら信頼感を取り戻せやる気になれるのか、その原因と対策が映画「シン・ゴジラ」の中に隠されています。

  日本の社会組織は、時間はかかるものの、脅威に対して相応の対応力を示して来ました。それでも処理できなければ、なかったことにして前に進んでいました。高度成長の時代は生み出す富の成長スピードが速く、過去の経験則が同じように役に立ったため時間がたつにつれ問題がめだたなくなりました。第一次オイルショック後の不良債権も、円高不況も同じような対応で解決しましたが、20世紀最後のバブル崩壊ではその処理が予想以上に長引き成長も止まって身動きがとれなくなりました。想定外の事態には対応できないのです。

 映画でも日本政府は相応の対応力を示しますがゴジラはそこに収まりきれません。想定外の恐怖をたっぷり味わった後は、ゴジラが何を象徴し人々がそれにどう対応するのか想像力を働かせると別の面白さを味わえます。想定外の事態に組織の意志決定が進まない中で、映画の中では何か出来ないかを「本気で」「考え」るグループが組織の内部に生まれます。このグループでは、おかしいと思うことをおかしいと素直に口に出して行動できます。そのネットワークを通じて情報を共有し色々なアイデアをともに「考え」、問題への斬新な対応を生み出していきます。カリスマのようなヒーローはいません。

 もちろん映画は虚構ですが、このようなグループが現実に生まれるにはいくつかの条件がありその点も映画は丁寧に追っています。グループの本気度つまりやる気年齢が若く、過去の経験則にしばられる邪魔がないという条件です。本気度とは、どうせ言っても無駄とか、言い出すと損をするとか損得勘定で判断しHOWを考えるのではなく、自分たちのやっていることは何で、そのためには何が必要かを必死で「考える」という態度です。映画で過去の経験則からどうやって逃れるのかはネタバレになりますので、岐阜で変革に成功した企業経営者の多くが、40代で事業をひきついでいるという実例をあげておきます。

 映画では人の変化をじっくり追う時間がないため、本気の人はすべて変人として描かれていましたが、変革に成功した組織では普通の人が仲間との対話の中で心を動かされ本気に変わっていきます。三菱自動車と似ていたいすゞ自動車がどのように変わったのかについては、貴重な記録『なぜ会社は変われないのか』日経ビジネス人文庫『どうやって社員が会社を変えたのか』柴田昌治他、日本経済新聞出版社が残っています。「シン・ゴジラ」を見た後にあわせて読むと、より将来への元気をもらえるかも知れません。 (岩崎)

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