No.756 Sapporo Sight-Seeing (3) 札幌人のソウルフードは何か?

 本当は“ソウルフード“という言葉は軽々には使いたくなくて、アフリカン・アメリカンの差別に対する苦難の歴史の意味を含めずファッション的に用いるのは一種の文化盗用ではないかと思うのだが、それはそれとして。

 授業で異文化の話をする際に、誰もが毎日接しており、また些細な差異が分かりやすいということで、食べ物を題材にすることが多い。学生に聞くと、出身地ごとに特徴的な食べ物、伝統食からB級グルメ、各家庭料理まで様々なソウルフードが挙げられる。では私はというと、北海道にいるときには食卓に出ようものなら「貧乏くさい!」と怒っていたニシン漬けが、冬になるとどうしても食べたくなる。春になるとキトビロ(ギョウギャニンニク)が食べたくなるのだが、こちらは飛弾の方で栽培しているのを知って、幾分心が落ちついた。

 羊肉も、たまに無性に食べたくなる。これも内地では手に入りにくいのだが、中国(東北地方)人留学生たちから「先生、犀川のP6や北方のKNSEで冷凍肉が売ってますよ」と教えてもらい、こちらも心が落ち着いた。しかし、残念なのは内地ではソラチのジンギスカンのたれが入手しづらいことだ。ベルのたれ、あるいはソラチ豚丼のたれだと、酒販店LMや輸入食品KC、北海道どさんこプラザなどで売っていることがあるのだが…。ちなみに、P6やKNSEで売っているのは昔ながらの馴染み深い「ハム状に成形した肉を薄切りにしたマトン」なのだが、今回札幌で取材したところ、どこのスーパーにもチルドのラム肉しか売っていなかった。というか、そのラム肉は牛肉より高かったのだが、もう郷土食というか、頑健で巨大な北海道人の身体を形作る貴重なタンパク質源としての役割を終えたのか?羊肉。私が高校生のころは1回におよそ1kg食べた(弟+父母の4人家族で2kg消費)ものだったがなあ。もちろん「最も安い肉」だったから、できたことなのだが。

 一方で食べないのが、松前漬け。いや、好きな北海道人もいるのかもしれないけど。受け狙いで甘納豆入りの赤飯の話はするのだが、実は普通にササゲの赤飯の方が好き。コンビニおにぎりは絶対に温めない。ザンギは好きなのだが…内地の唐揚げで十分だなあ、という感覚。

 もちろん近年はインターネット通販の発達により、値段と送料を考えなければ、好きなものを取り寄せて食べることができる。昨年は、どうしてもグスベリが食べたくなって、お取り寄せした。今確認したら、ハッカク(トクビレ)の刺身も季節限定通販しているではないか!ソラチのジンギスカンのタレも、商品価格に比して高額な送料さえ覚悟すれば、いつでも購入できる。デパートの北海道展では氷下魚の干物を入手することができる。コアップをはじめとするガラナ飲料などは、直近の量販店DQでも常備しているぐらいだ。

 それでも、買えるけどなかなか踏ん切りがつかない物もある。それが、今回なぜか食べたくなってわざわざ写真に撮ってきた“とびっこ”である。これはトビウオの卵で(子供の頃から本当なのか疑念を抱き続けている)、プチプチとした食感と後味に残る苦みのようなエグみのようなものが特徴である。北海道の安い寿司の中に軍艦巻きとして鎮座していることが多いが、残念ながら内地では見かけたことがない。それほど「食べないと困る!めちゃくちゃ食べたい!!」というほどのものではないことに加え、ネット通販では業務用500gの販売が主流で、痛風発生装置のような罠である。今回、たまたま「食べたいな」と忘れずに思っていたため、和食ファミレスと回転寿司で1回ずつ食べることができた。でもやっぱり1度に4貫も食べるほどのものではなかった…。

 こうして挙げてきた物は、ニシン漬けの悪口を書いたように、恐らく地元にずっと住んでいたら猫またぎするようなものも多いのだろう。遠く離れて手に入らないからこそのソウルフードなのかもしれない。やっぱり本来の意味とは用法がずれてるなあ…。 (畦地)

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