No.757 多様性と対話

 今年は今後の日本人に影響を与えそうな出来事が多くありました。大型台風等自然災害や放火、車の暴走等の不条理な力が都市部にも及ぶことを痛感するようになり、吉本興業や関西電力の収賄で既存の日本型大企業の社会的な硬直性が掘り起こされ、ヒアリの上陸、日本国籍のIS参加者の拘束、芸能界の薬物使用等から日本だけが世界から安全に切り離された場所ではないことが誰にも明らかになりました。暗澹たるニュースが多い中で、大坂なおみ選手の全豪オープン優勝、白鳳の15度目の全勝優勝、サニブラウン選手100m9秒台、渋野日向子の全英女子ゴルフ優勝等、スポーツでは例年にない活躍の年となりました。その中でも、皆の心をわしづかみにしたのがラグビーワールドカップでの日本代表ブレイブ・ブラッサムズの活躍でしょう。

 4年前のロンドン大会での南アフリカからの大金星の際は、確かに五郎丸ポーズが流行しましたが、外国人選手の多いラグビーは日本代表の気がしないとか、ルールがわからないとか、決して野球やサッカーのような日本代表というイメージはありませんでした。しかし、今回は世界のトップが間近で試合するだけでなく、日本代表が強豪を破り続けて予選リーグを突破したため、テレビ視聴率は鰻登り、懇切なルール解説だけでなく戦術的な深い分析も示され、にわかファンが大切にされたことも日本の文化の中では特筆に値します。その感覚がラグビー会場に駆けつけた人々に伝染し、パブリックビューイングもサッカー以上の盛り上がりでした。多くの人がラグビーの中に子どもの頃に経験した運動会のようなワクワク感をみつけ、思い思いに楽しめました。

 楽しめた根本原因は、代表が勝ったことですが、僕たちが「外国人」と呼びがちなチームメイトと共通語で話し合い意志を統一出来たことが大きいでしょう。試合中ゲームが止まる度に、15人が集まり多くの選手が発言して打合せをする姿を何回も目にしました。日本の他のチームスポーツではめったに見られません。同じことがスタジアムの観客にも起っていました。国籍関係なく良いプレーに拍手し、ともにウェーブし、ハーフタイムには5万人の「カントリーロード」のカラオケ大会となりました。行きも帰りも観客同士やボランティアとハイタッチ。会場へ向かうバスで他国の観客が応援歌を歌い出すと、シャイな日本人が見知らぬ同士で君が代を大声で歌い出すなど、昔の祭りのような不思議な一体感と多幸感を経験できました。  スポーツの世界では一足先に動き出した多様性を受け入れそれをお互いに対話して大きな力を引き出す流れが、RWCだけでなく、若い人のこれからの社会、活力ある日本には必要でしょう。そのためには、違いを認め違うことを前提に話し合う、僕等の苦手な対話力が、スポーツにも組織にも社会にも家庭にも、必要な時代に入ったことを今年は暗示していたのでしょう。来年のオリンピックは、観客ボランティアを問わず絶好のトレーニングのチャンスです。(岩崎)

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