No.761 欠点を個性に

 刃物の町として知られる関市の行財政改革推進のお手伝いをしています。面積472平方キロ人口9万人、山林を持つ6つの市町村が広域合併誕生した関市は、美濃市を取り囲むように二つの谷沿いにV字型に広がり、行政サービスをコンパクトに提供することが困難な地形です。西北側の旧板取村も東北側の旧上之保村も林業を中心とした山村で、それぞれ観光振興を図ったものの、人口流出に歯止めがかかりません。

 何もない山村では教育、医療、老人向け福祉等地域に密着した行政サービスが都会以上に必要ですが、その維持費は膨大です。手が着きやすい小中学校の統廃合を進めますが、子供達の安全には変えられないと国の補助金で耐震工事を終わらせたところも多く、統廃合しても借金を返し続ける必要があります。一方、廃校で地域の子供はさらに減り、診療所にもお医者さんを呼べず役所の事務所だけが立派と言うことにもなりかねません。市が将来を見据えた再配置計画を持っていないと、あっという間に財政破綻してしまいます。161107b

 関市は危機感があり早い時期から再配置計画を整備されていますが、今回市民による審議会での活発な意見交換で、二つのポイントが見えてきました。一つは、可能性に心を開くことです。地元の人に聞くと嵐山以上にもみじと渓谷が美しい旧上之保東小学校の廃校には、名古屋のドローン製造会社が進出しています。大型ドローンは1機ずつ組み立て調整を行いますが、そのためには飛行許可がとれ周囲に迷惑をかけない場所が必要です。161107a小学校の運動場が自然の実験場となり教室も組み立て工場等で活用できます。大型ドローンは空撮のみならず、山間地への物資運搬、害獣駆除や救急・災害救助等新しい用途が色々考えられます。このメーカーは中部の市町村に廃校の利用を問い合わせたそうですが、関市だけが反応したそうです。村の欠点だった「何もない」が、ドローン発信の最先端地域となる条件でした。心を開いた結果が誘致につながっています。

 もう一つは、地域住民の意見、それも従来政治に参加してきた中高年男子だけでなく老若男女の意見を聞き、何をやり、何をやめるかメリハリをつけることです。関市はモネの池や五郎丸観音等昨年来多くの観光名所を生み出しましたが、みな口コミで広がったものがメディアに取りあげられました。観光協会に良い意見を伝えても実践されないと思っている若い事業者は、自分で発信しています。わずか1週間だけ開く武芸川のカタクリの群生を目玉に今年は3つの旅行会社がバスツアーを企画しましたが、地元の飲食店の女性が名古屋の会社に旅程を含めたプレゼンを仕掛けた成果です。縦割りの行政組織では動きが鈍り、旧来サービスを見直し素早く必要な行政にシフトすることができません。可能性に心を開き、地域の声を聞く。これは、大正時代小林一三が産業社会構造の変化を見抜き赤字鉄道を旧来の鉄道意識から解き放ち、多くの事業を創造した手法と同じです。 (岩崎)

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