No.789 ピーターパン味覚シンドローム

 ピーターパンシンドロームは、米国の心理学者ダン・カイリーによって提唱されたパーソナリティ障害で、年齢的には大人であるにもかかわらず精神的に大人にならない男性を指すものですが、私が言うピーターパン味覚シンドロームは、心理学者ダン・カイリーが唱えるピーターパンシンドロームとは異なり、男性だけでなく女性にも多く見られます。

 味覚は「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容体で認識され、辛味は痛みを感じる痛点で感じているため味覚の要素ではないとされています。現在、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5種類の基本味が味覚の要素です。味覚は年齢と共に発達し幼児の味覚は大人よりも敏感で、味覚を感じる味蕾の数は幼児期に最多で年齢とともに数が減り感度は落ちます。そのために刺激の強い味は、大人になってから食べられるようになると考えられています。味覚の転換は大人になるとともにおきて苦味や辛味、酸味なども美味しく感じるようになります。

 赤ちゃんにとって甘味、旨味、塩味は母乳の栄養成分でもある炭水化物、タンパク質、ミネラル分の各成分が持つ味で成長のために必要な栄養素です。それに対し苦味は毒の持つ味、苦味や酸味は腐敗したものなどの有害なものと判断し身を守るために吐き出す反応をします。

 私が言うピーターパン味覚シンドロームは、最近の大学生が幼児期の味覚のまま成人になっていると思っていて、寿司はワサビ抜き、ビールやコーヒーは苦いから嫌い。仲間同志で飲みに行ってもビールの注文はほとんど無く、カシスオレンジ、レモンサワーなどの甘いカクテルなどばかりです。ビールなどの苦味などを美味しく感じる条件は、楽しい経験と共に食べることで味覚に変化が起きるとの研究があって、新入生歓迎コンパが18歳の新入生への飲酒が厳しく制限されたことが、若者のビール離れの一因であると私は考えています。また、家庭での子供の食べ物に関する好き嫌いの躾が甘くなっていて、子供の好き嫌いを容認する傾向もこのことを助長していると思っています。

 ここでの私の問題意識は、好きなものだけ食べ続けて嫌いなものを克服しようという意識を学生たちが持っていないことです。ベトナム海外研修を引率した時にも、海外研修の意義は日本では経験できない新たな経験をすることが視野を広げるために積極的に体験することを約束したにもかかわらず、食べ物の好き嫌いが多く見ただけで味を確認もせずに拒否する学生がいて、大人になると味覚が変化して子供の時に嫌いと思っていたものが美味しく感じられる様に変化してくるから挑戦してみなさいと促すと、先生は私のアイデンティティを無視するのかと噛みついてきた学生がいて驚いてしまいました。また、インターンシップ研修に行った学生が、新商品の試食会に参加させていただいた時に、これ私嫌いだから食べられませんと断ったケースもあるのです。

 消費者なら嫌いだからで済むことが、就職して生産者側に立った時には、なぜ私はこれを美味しいと感じないのか、味や香り触感など何の要素が美味しさを感じない原因なのかなど分析する力が求められます。開発や企画などの仕事に就きたいと求めるなら是非旺盛な好奇心によって、無理!と思わずに自分の夢実現のために好き嫌いの壁を越えて欲しいのです。 (田村) 

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