No.791 リーダーの選び方

学生の解答には時々はっとさせられます。コムデギャルソンを率いるデザイナー川久保玲さんは、デザイン画を描きません。自分のイメージをパタンナーに言葉で伝え、パタンナー間の真剣な議論の中から誰も想像しなかった斬新なデザインを40年近く生み出しています。典型的な有機的組織運営ですが、VTRを見せて質問すると毎年何人かの学生は、「川久保さんが一人で最終的に決めるので機械的組織」と自信を持って答えます。なぜ間違えるのか質問してみると、「上から絶対の命令があるのが官僚制や職能別組織(息苦しい)。明確なリーダーがおらずふわっと方針を決定するのが、プロジェクトチームのような有機的組織(楽かな)。」と直感的に捉えている若い人が結構いることがわかりました。

人が共通の目的のために協働して組織を作るとき、分業やルール作りが便利なことはすぐ理解できます。仲間同士で情報を共有して相談し、最終的にリーダーが一つのやり方を決断しないと前に進めないことは、社会経験が少ないと理解できません。集団の意志決定は時間だけが過ぎ、ぎりぎりになって多数決に頼るやり方しか学校では経験していません。欧米ではリーダーの大切さとリーダーにどう協力するかで自分たちの運命が決まることを早い時期から教えるようですが、日本の学校では時に成績の良い人や目立ちたい人がリーダーをやり、ひどい場合にはいじれる相手をリーダーとする事さえ起きます。リーダーは命令する人、命令されるのはイヤ、リーダーはいないほうがよい、だからリーダーを任せられたら、無難に皆の反感を買わぬよう行動しようと感じているのかも知れません。

リーダーの決定を軽視する決め方が良い決め方と誤解している人が増えているのなら、国民感情でルールである司法判断を動かし国のトップを更迭したり、過去の会社運営の失敗について暴露的な裏話を出版してみたり、組織に所属していた際のルールに従った判断を、組織を離れた後に強制されたものと世論の同情を引きつける形で反論を試みたりする、最近の風潮の背景が理解できるような気がします。

柔らかい決め方が本当に良い決め方か、どういう場合に三人寄れば文殊の知恵になるか、6人ほどのグループで1年生に時間を区切って実験してもらいました。この実験ではグループで考えた結論が各個人で考えた結論の平均より改善するのが普通です。今回色々なタイプの学生にリーダーをお願いしたら個人平均より改善したのが12グループ、悪化が6グループになりました。悪化したグループはグループ決定に多数決を採用したり、声の大きいメンバーの意見に引っ張られる集団浅慮が発生したりしていました。一方、グループの中にはグループでの結論より良い結論を持つ個人がいるのが普通ですが、今回どの個人より良い結論を導き出しグループが二つ生まれました。リーダーは仲間の発言を促し整理し、時間内で決断して個人の能力を超えました。三人寄れば文殊の知恵になるためにはリーダーとその決断が重要、皆さんの所属している組織はどうですか。 (岩崎)

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