No.794 常識を無視する

「日本人の社会人1人の給料で、3カ国語を話せMBAを持った東南アジアの人を3人雇える。君が社長ならどちらを雇う?」 X-TANK伊藤嘉明社長の講義は強烈な常識への平手打ちから始まりました。コカコーラ、デル、アディダス、ソニーピクチャーズ、ハイアールとヒットを飛ばしながらマーケティング力で渡り歩き、日本を覚醒させることに情熱を燃やす実務家です。

「変動し、不確実で、複雑化し、曖昧な時代には常識では立ち向かえない。自分の知っている市場だけでなく、政治社会も見渡してビッグピクチャーを描き、勝てる戦いに変えていくためには、常識を無視しろ。知識が簡単にスマホで手に入る時代、従来のプロは通用しなくなった。AIにはかなわない。知識経験より姿勢が大切で、ダイバーシティを受け入れ、何よりも勝ち癖をつけろ。マーケティングを自分自身にも適用せよ。まず安楽安定を求めるコンフォートゾーンを抜け出せ。安楽安定などこれからないのだから。その際有言実行せよ。不言実行は卑怯なやりかた。自分の人生を自分のものにせよ。そのためには他人の言うことは聞くな、そしてゲームチェンジャーになれ。」

高校の先生、社会人、学生と共に激しく刺激を受けながら、なぜか暖かさを感じていました。一つひとつはマーケッターらしく人々の関心を引く刺激的な言葉なのですが、通して聞くと自分とは異質なものに対する温かいまなざしと、海外から評価されていた日本の良さを復活させていきたいという姿勢が伝わるのです。「常識を無視せよ。」は、日本人としてもっている当たり前という偏見を打ち壊すために、ダイバーシティ=異なる文化や考え方を積極的に受け入れる努力をやり続けろ。それが出来たかどうかは、苦しくても日本の常識に逆らって有言実行したときに明らかになる、という意味でしょう。そうすると、飛びつきたくなる「他人の言うことは聞くな」も逆説的であることがわかります。自分の人生を自分のものとするためには、偏見で目を曇らせず周囲の情報を事実に即して集める。そのために、他人の意見をきちんと聴く力を身につけた上で、どうするかは必ず自分で考えて決めろ、という意味なのです。その際、自分の直感を信じろ、そしてまず自分で実践しろ、ともおっしゃっていました。

自分自身の考えの偏りにはなかなか気づけません。ハンディキャップのある人たちと真剣に対話すると、初めて自分のあさはかさに気がつかされることは良くあります。同じように海外の人たち、特に僕たちが妙に低く見ている東南アジアの人たちと真剣につきあうと、最初感じた大きな違和感や嫌悪感の後に、自分のゆがんだ姿が透けて見えることを経験できます。(日本の)常識を無視することを教えてくれた伊藤社長はタイで生まれ育ったそうです。タイの人々が日本人の勤勉や正直さ、信頼感を賞賛していたのに、今の日本はどうなってしまったのだ、だから(日本)人の話を聞くな、自分の(日本人としての)姿勢を大切にし、(日本人としての倫理の)直感に従えと、語られたのでしょう。若いときの海外体験は宝物です。 (岩崎)

 

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