No.800 弱者の差別化

一年生に学内講演会「オリジナルな惣菜開発と百年の経営」を薦めたところ、試験期間中にもかかわらず40名もの学生が来て補助椅子がでる盛況となりました。大垣の食品メーカー大丸松下食品株式会社、松下社長の体験談です。大手食品メーカーで修行し三十代で先代を継いだ社長は大手と同じ事をやっては生き残れないと自分を磨き、商品を磨き、社員を磨いて、小さいけれど宝石のような会社を創り上げます。

社長の仕事は、まず金融機関とうまくつきあうこと。赤字で倒産する会社よりお金が回らず倒産する会社が多いからと、授業で取りあげたポイントを実体験で話して下さいました。実際に銀行が中小企業をチェックするポイントは、決算書、担保、社長の3点。決算書は経営を改善しても一年は変化を示せないし、担保は親ゆずり、だから自分は社長としての自分を磨いた。このあたりから学生が身を乗り出します。

商売では売上げを伸ばすだけではダメで粗利を落とさない工夫がいる。色々調べてランチェスター戦略にたどり着き、特色のある商品で差別化を図る道を進んできた。弱小な企業にはそれなりの戦い方がありそれを無視してはいけない、と続きます。ランチェスター戦略を頭で知っていても実戦に応用出来る人はまれです。弱者はシェアをとり価格決定権を持たないと、値下げ競争に巻き込まれる。だからシェアがとれるような小さな市場しか狙わない。イオンやヨーカドーでなく、数店を経営する中小スーパーに総菜を提案提供し、絶対に安売りしない。そんなことができるの? と不思議そうに見つめる学生に、松下社長は実物を見せ、鮮烈な種明かしをしてくれます。

今時真空パックでない「甘い金時豆」と書かれた食品トレイに山盛りに盛られラップをかけた豆が、売れ筋商品だというのです。少量パックが一般的な個食志向や健康志向に逆行する商品ですが、意外と昔ながらの甘い味には根強い人気があり、大容量の値頃感と、トレイを使った鮮度感、平台に置かれる売れ筋感から地元中小スーパーの目玉商品となっているのです。大手食品メーカーは、不健康と見られる商品では消費者から非難を受けかねません。また甘い総菜のニーズは市場も小さいので、決して攻めて来ません。同業中小が真似をしようにも、どうやったら安く高品質の豆を仕入れるのかがわからず、何とか真似してみても加工の難しさにすぐ音をあげます。卸が値引きしたらもっと売れますよと言ってきても、卸にとっても売れ筋なので、自信を持ってお断りできます。

安い中国産に対抗できる工夫を凝らした国産の焼き鳥、学生のアイデアを活かした佃煮など、驚きの商品ばかりです。これらの工夫は、社員一人ひとりとの対話を続けることで生まれてきている背景も教えて下さいました。大手にはできないずらし方=差別化で、価格を維持し粗利を守る。学生からはビジネスは面白いとの声が多く聞かれました。弱者の差別化は僕たちの人生にも応用できそうです。  (岩崎)

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