No.801 天空の茶畑

岐阜県揖斐郡揖斐川町は岐阜県の西端、滋賀県との県境にあって伊吹山地の山麓に位置している。岐阜市から車で1時間30分とそれほど遠くないのだが、揖斐川町中心部から春日地区に入る県道32号春日揖斐川線は道幅も狭くカーブの多い道で運転に不慣れな人には辛い道である。

県道を右折して「天空の茶畑」に向う道は更に狭く急こう配で急カーブが続く、しばらく登るとパッと視界が開け緑色の茶畑が眼下に広がる、上ヶ流(かみがれ)地区に到着である。

日本中のほとんどのお茶は静岡県で品種改良された霜に強く成長が早い上に香り高く甘みの強い「やぶきた種」に植え替えられたのだが、上ヶ流地区は山間部で急こう配の場所にお茶の木が植えられていて、根が深い古来種の茶樹を植え替えることが困難であったために古来種の茶樹が残されたという。

所説あるのだが、日本茶の起源は、延暦24年(805年)伝教大師最澄が中国浙江省天台山から持ち帰り、比叡山山麓の坂本(滋賀県大津市)の日吉大社に植えたものが日吉茶園として現在も残されている。(他に京都市左京区の高山寺(こうざんじ)にも最古と言われる茶園がある)

上ヶ流地区の古来種もこの日吉茶園の茶樹が各地に広まったものと言われていて、現在のやぶきた種とは異なることが確認されている。

もう一つ、上ヶ流地区の茶葉栽培の大きな特徴に「無農薬栽培」が実現していることにある。通常の茶栽培では農薬の使用が不可欠と言われ、茶葉にはアブラムシやチャノミドリヒメヨコバイなどの害虫が付いてしまう、すると茶は害虫から身を守るために渋みを出すために味が悪くなり茶の品質が落ちてしまう。そのため、日本国内で茶の無農薬栽培が可能な場所は離島などの限られた場所で行われるのみである。

上ヶ流地区は山岳地域で伊吹山という豪雪地帯にあるために春の一番茶のシーズンは虫がこの地区に上がってこれないという地の利によって無農薬栽培が実現されている。

この貴重な茶畑が地域の高齢化・過疎化によって維持できなくなることに危機感を持った住民が立ち上がり、「岐阜のマチュピチュ」「天空の茶園」として売り出すために見晴らしの良い山の斜面を切り開き展望台を作った、これがネットやテレビで取り上げられたことで話題となった。

しかし、話題にはなって休日には多くの観光客がこの地を訪れ、狭い道は大渋滞となり、静かだった地区は騒がしくなったが、地区にはお金は落ちない。 (田村)

 

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