No.803 観光で豊かになる

新幹線や街中で外国人旅行者と出会う機会が増えました。訪日外国人旅行者(インバウンド客)は、2013年に1千万人を越え、昨年は前年比22%増の2千4百万人です。旅行者が増えれば、彼らが払う宿泊費、食費、おみやげ代等で地方も潤います。各地方も工夫を凝らして呼び込みに力を入れています。しかし手段を目的化することなく、観光振興の本当の目的を住民が意識して施策を実施している地方は限られています。

今年は岐阜市のインバウンドに関する都市創造会議の委員をやっています。様々な専門家の話が聞けましたが、参考になったのは若い女性委員の発言でした。観光専門ではない彼女は一市民としての感想を、「岐阜と言えば(岐阜市以外の)飛騨というイメージが先に浮かんでしまうため、岐阜市の景色の美しさや暮らしやすさを感じていても、観光目線での発信ができない。」と、まとめてくれました。

岐阜に暮らす人の歯に衣着せない実感こそが、地域に根ざした観光振興のスタートになる鍵です。彼女の発言を読み解くと、岐阜市民が「観光」という言葉からイメージするのは、すでに観光に力を入れ成果をあげている「飛騨高山地方」であり、岐阜市の実体や生活からは縁が薄く、観光になぜ力を入れるのか、それがどう生活を改善するのかのイメージがわかない。一方、岐阜市に暮らす便利さ(中核都市)や、その割には豊富な自然や水等、恩恵は強く意識しているが、それが観光につながるの? という感覚です。

さらに中高年が観光からイメージするのは昭和から続く団体旅行・修学旅行で、画一的サービスの中で恥をかき捨てるものでしょう。観光供給側の地元やビジネスは一段低俗とする見方ともいえ、本当はお金を落としてくれる個人観光客に真剣に目を向ける動きに繋がりません。13年前ニュージーランド観光のコラムで書きましたが、同国では税金の多くを観光客が払っています。豊かになる目的のために、観光客を受け入れる必要を国民が理解しています。日本は豊かだったせいか、未だ理解されていません。

観光客が地域にお金を落とすとは最低でも一泊し、その地で生活費を払ってもらうことです。生活するには中核都市の方が便利で綺麗であればなおさらです。それなのに岐阜市内の2016年の外国人宿泊客数は前年比16%の減少です。ホテル等の稼働率は80%を越える一方、旅館は50%台で宿泊施設・サービスと旅行者がミスマッチとなっている可能性があり、うまくやればまだまだ地元にお金が落ちます。また旅行者が何を求めいているかわかれば、民泊を含め優先順位の高い専門的な手段が検討できるでしょう。その点、観光に命をかけている高山市の調査は、民間事業者が効果的な手段を考えやすいよう行き届いています。

9月2日1時から、新観光立国論を唱えたデ-ビット・アトキンソンさんをお呼びし、「観光立国としての日本の行方」という朝日大学公開講座を穂積市総合センターで開催します。本気で地域を観光で豊かにしたい人は、是非ご参加下さい。 (岩崎)

 

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