No.806 次の人類

夏休みもいよいよ終わり。何となくブルーなら、SF恋愛映画で暖かい未来に想像力を羽ばたかせましょう。『her/世界でひとつの彼女』は、美人で才能溢れる前妻との離婚に悩み生きる目的を失いつつあった男性が、スマホのSiriをもっと賢くしたOSと話すうちに希望を取り戻していく話です。iPhoneXが安っぽく見える胸ポケットに入るスタイリッシュな名刺入れ型デバイスを皆が持ち歩いている近未来。パソコンやスマホへの指示は、全て音声で行われメールはあたかも手書きしたような暖かみのあるフォントで印刷され送られます。秘書代わりとなるデバイスのOSの声も知的でセクシー、映画自体の映像表現もインスタ映えしそうな色温度の高い暖かみのある色彩で描かれていてほっとしますが、人間の意識を次第に越えていくOSとのコミュニケーションはほろ苦い結末を迎えます。ただし、よくある人間とAIとの対立ではありません。これから何が起こるか、温かい気持ちで想像するにはうってつけの映画です。

未来に何が起こるか予想はつきませんが、アナロジーという想像する手法はあります。4次元を想像する方法で説明しましょう。4次元の球はどんな形か考えても想像がつきません。そこで次元を落として考えます。3次元の球は、2次元ではどう見えるでしょうか。たぶん円だなとこれは想像がつきます。そこで2次元の住人が2次元を通過する球を見るとどうなるか。2次元のなかにまず点が現れ、その点が徐々に丸く大きくなってあるところから収縮しだしてまた点になり、消えることになるでしょう。これは球の平面(2次元)での切片です。4次元球が僕等の住んでいる3次元を通過するなら。まず点が現れそれが小さな球になりそれがだんだん大きくなって、小さくなって消えていくでしょう。もしそういうものにでくわしたら間違いなく4次元球が僕たちの目の前を通過したことになります。先ほどの映画は、まさにこういった不思議な感覚を楽しめます。

AIについては以前『硬殻機動隊Ghost in the Shell』から自分の頭で考えるヒントを見ましたが、人類が今後どう変わっていくかについて歴史学者ユバル・ノア・ハラリは、人類の歴史を俯瞰してアナロジーで想像しています。人類は空腹と病気と戦争という理不尽な死から逃れるため、神の計画の一部として神に祈る時代を経て、科学や文明により死を減らす方向に変化してきた。これからは遺伝子工学と情報科学の融合で、不死を求めることもより賢くなることも数十年後には可能になる。そのとき新しい人類は、知性と意識が完全に切り離された今までとは異なる人類に進化する可能性がある。神官や王制の時代から民主主義に移行してきた歴史の次の次元は、データ主義という「宗教」が取って代わると想像しています。歴史の近代化への変化の本質は、生きる意義と引き替えに可能性を手に入れてきたもの、という彼の見方からのアナロジーでの予想です。翻訳は来年出版される予定ですが、まず映画を見て温かい気持ちになったら、それで終わらずに彼の前著「ホモサピエンス全史」から色々人類の歴史に思いを馳せアナロジーを働かせてみてはどうでしょう。前に進む希望が生まれるかも知れません。(岩崎)

 

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