No.816 植物の行動心理②

 1980年代に植物が「かおり」を使って外敵昆虫から食べられることに対抗するために外敵昆虫の天敵を呼ぶという最初の論文が提出されたが、反論が続出したためにこの研究は休止に追い込まれてしまいました。しかし、2000年以降「植物間コミュニケーション」は事実であるということが実証されるようになりました。

 50年以上前から根粒菌とマメ科植物との共生関係は教科書にも掲載されてきましたが、この共生関係についても非常に細部にわたる研究が行われ、植物が根粒菌を飼いならし、植物に有利な固定窒素を大量に作らせるように仕組んでいることなどが明らかになっています。この様に植物は植物同士や動物などとの間でコミュニケーションをとり、予測し、選択し、学習し、記憶する能力を持った生物であることが、さまざまな反証を乗り越えて明らかになりました。

 植物は、脳や胃、肺、肝臓などの動物が持っている臓器とは異なる形態で、生命維持のための機能を持ち、生存に必要な情報を得るための感覚器官を備え、処理し、得られた情報を活用しているのかは、植物研究の今後の大きなテーマと言えるものです。

 植物が環境の変化で具体的な行動として認められているケースとして、鹿の食害によって植物が形状を変化させた例があります。鹿が増加する前に成長していた木の葉に対して、鹿の増殖後に成長したものは、木の葉が小さく、大きく成長したトゲの中に隠れる様な形状に葉が変化し、同じ植物とは思えないほど大きな変化が見られます。

 ワイルドタバコの木は、外敵であるスズメガの幼虫によって葉を食べられると、スズメガの幼虫であることを特定し、スズメガの天敵であるカメムシの仲間を呼び出す信号を出し、スズメガの幼虫を駆逐してもらう行動が認められています。

 沖縄県などにあるマングローブの木は、海岸付近に根を張り海水を取り込んで生育していますが、塩分は植物にとって有害なために特定の葉に塩分を集め、落葉させることで塩分を体外に排泄することが知られていて、これも植物が環境に対応している例です。

 果樹栽培で言われている例ですが、肥料を与える時期と量を間違えると実が大きくならず、味も落ちてしまうことがあるそうです。植物にとって果実は自身の子供ということだけでなく、新天地への移動手段という意識があると言います。この場所は栄養も少なく、今後生きていく場所としては適切ではないという判断を下した時に、養分を果実に蓄え、新たな場所で確実に根を生やすことができるように、大きく生命力の強い美味しい果実を実らせる栽培方法があるのです。

 つまり、植物の成長期には適切な肥料を与え、十分な基礎体力を作っておいた上で、過酷な環境に移行するなどして、植物をだまして果実に養分を集めさせるという、人間と植物の心理作戦ともいえる栽培方法ですね。 (田村)

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