No.818 卒業生からの伝言

先日、11年前に卒業したOBと一緒に酒を飲みました。卒業したときは、日本は空前の不況期で空白の10年といわれる時代でした。彼は、日本で皆がやりたがらない早朝勤務でハードな青果商の仕事を通じて、商売の基本とどうやって取引先から信頼を得るかを身につけました。その会社を皆に惜しまれつつも感謝されて退職して中国に戻り、自分で事業を起こして成功し、日本にも居を構えました。

学生時代深夜のアルバイトと授業との両立で疲れ果て、寝込んでしまった自分をそっとそのままにしてくれたバイト先の上司や、永住ビザをとるために色々配慮してくれた勤務先の社長さんなど、今の自分があるのは多くの日本人のおかげと今でも感謝しているそうです。同時に、日本人がどこに向かおうとしているのか少し心配になるとも言います。日本人が教えてくれた良さ、お互いに助け合い人も物も大切にする「もったいない」が消え、豊かさの中で欧米のような使い捨て文化が広がっているからです。

ネットで何でも買う時代になって、古い家電製品はお金を払って捨てるのが普通です。一方、韓国ではどんなにぼろぼろになっていても、より高く買ってくれそうな業者を探すそうです。日本でもまめな人はメルカリや中古ショップに持って行きますが、大半は粗大ゴミシールを貼って自治体に引き取られ廃棄物として処理されます。おかげで、彼の現在のビジネスが成り立っているというのです。

扱う商品は、パソコン、冷蔵庫、クーラー、農機具、ミシン、自転車、等です。日本では廃棄物として扱われるものを、彼は海外に販売します。冷蔵庫、クーラーは、型番によって1台2万円くらいで、ベトナムやスリランカに売れます。驚くのはミシンで、なんと30万円の値もつくものもあります。高値で売れるのは電子回路でモジュール化する前の機械の比重の高い商品で、修理すれば長く使えることが高く評価されているそうです。もともと日本人は一つの商品を治しながら使うことに長けていて、だから中国製の安い自転車が東南アジアに溢れる時代でも、中古の日本製自転車が大変人気なのだそうです。

インドと中国では、このような中古電気機械製品の輸入は認めていません。産業政策として国内で工業製品を作るために、優秀な中古機械が安く手に入っても輸入しない方針を貫いるのです。自分は商売をさせてもらっているからえらそうなことは言えないが、他の東南アジア諸国は目先の便利さにかまけて産業発展をないがしろにしていることが、各国の解っている人は情けないと思っているとのことです。

奥ゆかしい彼は言いませんでしたが、ものを大切に使うという、海外からも評価される自国の文化そのものを、利便さと金にまかせて廃棄している日本人は、意識していないだけに、なさけないを通り越して将来がないともいえます。日本を思う彼の諫言に、苦さも感じるうまい酒となりました。(岩崎)

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