No.820 賢人からの年賀状

 あけましておめでとうございます。21世紀の日本は、物質的に私の時代よりずっと豊かになっていることでしょう。そして精神的にも、穏やかな満足に満ちた日々であれと願っています。だって、私が生きた二千年前のローマは、カリギュラやネロといった、悪名高い皇帝に支配された時代でしたから。でも、もし私の後の二千年が、自分の時間を大切にするという考え方と、運命に向き合う行動様式が身についていない二千年だったなら、皆さんも物質的に豊かではあっても、まだ仕事に追われ、嫉妬に追われ、物欲に追われる生活を送っているかも知れません。そうでないことを祈っていますが、万が一のため、私が昔友人に送った手紙を、皆様への新年のメッセージとしましょう。

 どんなに幸運の女神にほほえまれようと、翻弄されようと、人生は有限です。その短さを嘆く老人は、自身で人生を短くした人です。仕事人間、貪欲人間、怠け者は皆自分のために時間を使わない点で同じです。他人がどう評価しようと、自分の時間が本当の財産、自分のお金を配る人はいないのに、自分の時間なら他人にばらまく人が多いのはなぜでしょう。岩崎さんのような老人に聞いてみてください。彼の時間の中で会社から奪われた時間、債権者や部下、夫婦げんかにより奪われた時間はどれだけか。さらに病気の時間や怠惰に過ごした時間も加えて、人生にどれだけの時間が残るか。

 なぜこうなるか。それは自分のもろさに気がついていないからです。どんなことでも、たとえば空気を読めないと見られることを死にかけた人のように恐れているくせに、どんなことでも、たとえば実体のないゲームアプリの装備品でも不死身の神のように時間をかけ欲しがるのが人の癖です。死が間近に迫ってから、生きようと思うのは遅すぎます。

 人は昔から、未来への希望と現在への嫌悪に突き動かされて人生を行き急いでいます。人生を長くするには、未来に頼らず、現在を逃がさず、過去と向き合うことです。未来は運命を避けられず、どのように希望的に見えても絶望的でも不確かです。一方、過去は今更運命に左右されず確かです。しかし、忙しすぎる人は過去を見失います。現在にしか興味がなく過去を知らないため、かえって今が見えません。過去の賢人がどう運命と向き合ったのか? 今の上司のように過労死なんて決して強要しない、死の本当の意味を教えてくれる過去の賢人の英知を本に求めることで、今を活かす時間の使い方が見えてきます。

 私の時代は独裁者などの運命の牙が21世紀よりはっきり見えたでしょうが、たぶん豊かさでは、大して変わりないと思います。奴隷を持てば歩かず移動できたし、美食家は毎日はき薬を飲んで食べ続け一回の食事に数千万円を使うこともありました。あなたの時代は表面的に昔よりも進歩し多くの人が豊かさを満喫しているかも知れませんが、その結果、運命の牙は見えづらくなっているかも知れません。それでもある日突然ガンを宣告されたり、人災や自然災害が襲ってきたりするでしょう。賢人だけが人生の制約を超えられるのです。(セネカ 『人生の短さについて』より) (岩崎) 

 

 追伸 手早く人生の制約を超えたい人は、タレブ『反脆弱性』を読んでみてください。

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