No.822 効率の良い宝くじ

165-186859? 年末ジャンボ宝くじの1等当選番号です。金融論の授業では、宝くじは確率的には貧乏人への税金だという話をします。1等が当たる確率は一般的には1千万分の一に対して、交通事故で死ぬ確率は千分の1から1万分の1、宝くじの方が1万倍当てるのが難しいと言うことになりますが、毎年多くの人が宝くじを買い、大晦日にはNHKで中継されるのはなぜなのでしょう。

人間は確率で物事を判断するよう合理的に行動しているのではなく、期待できる金額が確率的には高いものより金額が低くても確実に手に入る方を得たい、逆にどっちにしても失うなら大穴をねらいたい、という限定的でいびつな合理性で行動するというのが、心理学者や経済学者の説です。負けがこんだギャンブラーが最後に大穴狙いをする感覚です。しかし、商売が上手な零細企業経営者として成功した僕の義父は、もう何十年も毎回数万円の宝くじを買っています。同じ事を何回も繰り返せば、いいかげん損だと気がついても良さそうですし、そこに気が回るからこそ零細企業で成功したはずです。

彼は当たるまでのワクワク感を買っているのではないでしょうか。その証拠にたまに当たると、当選金を気前よく孫にすべて分配してくれます。彼にとっては金銭で計算した利益より、宝くじを買うワクワク感と当たったときに家族に感謝される満足感というお金で計測できない幸福感の方が大きく、そのために毎回数万円使っているのです。お金の期待値ではあらわせない何かを、手に入れようとしているのです。

宝くじと逆のケースとして、数年前ハンガー・ゲームという小説がヒットしました。貧富の差が激しい仮想世界で、反乱の制裁を科す目的で地域毎に12歳から18歳までの男女から毎年各一人を選び、選ばれた者同士で殺し合いをして生き残った一人に一生を保証し賞金を与えるというゲームを娯楽として提供しています。宝くじと同じような確率ですが誰も参加したいとは思いませんし、12歳から7回もくじを引かされる人たちは、当然、最後に反乱を起こします。想像しただけでも抽選の度の不快感が実感できます。

失敗してもなにか満足感が得られ、かつ宝くじよりずっと確率高く幸福になれる賭けがあります。ビートルズ、剣道、模型作り、サッカー、映画、演劇、昆虫、レタリング、山登り、小説、ジャズ、経済学、クラシック音楽、RPGゲーム、野球、バードウォッチング…すべて友達が好きで、僕もつきあって経験できた趣味です。今でもいくつかは僕の幸せの大きな部分を占めています。家に一人でいるのが好きな出不精の僕にとって、友達とつきあわなければ知らなかった世界です。何かやってもうまくいかずイヤになるだけ、気を遣うだけ損、とハンガー・ゲームを決めこまず友達について行くと、宝物が見つからなくても見つかっても、幸せになれます。 (岩崎)

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