No.829 卒業後

 

 今日は卒業式ですが、大学時代に比べ、社会に出るとぶつかる問題はもう少し複雑になります。正解がないだけでなく明らかな不正解のほうがお得に見えることがたくさんでてくるからです。先日ある番組で、アパレル会社の孫請縫製会社が外国人研修生をとてつもなく安い賃金で働かせ、その上給料未払いのまま倒産していた事例をとりあげていました。縫製会社の社長からすれば、国内での下請孫請けは加工費を買い叩かれ利益がまったく出ないため、指導料は取らない代わりに賃金を安く抑えられる外国人研修制度を利用したのでしかたないということでしょうが、倒産後社名を変えて同じ仕事を繰り返していたとなれば、明らかに他人の生き血をすすっていたと言うことでしょう。自分達が生きのびるには仕方ないとお得な不正解に手を出した。僕たちも簡単にこの社長と同じになる可能性があります。

 搾取や不平等が正義に反することは皆知っています。しかし、もし自分の親や子が路頭に迷う状況に置かれれば、そしてそこに、自分達の仲間でない、さらには何を考えているかもどんな生活をしているかもわからない人がいたらどうでしょう。そこから少し奪うのは、仕方のないことだと納得しないでしょうか。僕たちが考える正義には限界があります。友愛や親愛を分かち合える仲間と仲間以外であきらかな線引きがあるのです。決して人種的偏見のような大きな話をしているのではありません。

 証券会社にいた頃、仕組み債という事業債を投資のプロに販売していました。FPの試験には出ませんが、生命保険会社など投資のプロは、自分たちの持っている資産全体を技術的に調整するため、特殊な利回りやオプションを組み込んだ債券を欲しがることがあります。そのような債券を買うことで、自分の持っている資産全体のリスクや利息収入の偏りを調整するのです。プロ向けですから大きなリスクがあるのですが、その後国内証券会社や銀行は、リスクを知らない個人にも同様の債券や投信を販売しました。当時の言い訳はお客様が欲しいと言ってくるから売っているというものでしたが、プロならきちんとリスクを説明し止めるべきです。同種の債券を販売したがった同僚がいましたが「あなたがもらう退職金全額でその債券を買うつもりなら、販売しましょう。買いますか?」と聞くと、その話は取りやめになりました。つまり仲間以外なら何をやってもかまわないという点では、縫製会社の社長と同じで、そう意識していないだけ、より悪質かも知れません。

 フランス革命の旗印、自由、平等、博愛はそれぞれ個人、社会正義、仲間に対応しており、それぞれの考え方は決して相互に矛盾なく一つの答えを導き出すわけではありません。社会に出る4年生の皆さんは、不正解を選ぶことを求められる現実に直面するかも知れません。その時にどうするか、卒業後もその日への準備、いつでも自立もできる技術と経験を磨き続けてください。 (岩崎)

 

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