No.859 時代にあった学び方

 

NHKの大河ドラマで西郷隆盛が取りあげられています。150年たっても九州では未だに西郷さんの人気が高いのですが、ドラマで下加治屋町から多くの人材が生まれていることが描かれています。エリートからではなく、貧しい武士が集まった町からどうして危機に対応した多くのリーダーが生まれたのか、近世日本史の磯田道史は「教育の質も鍛え方も格段に高い集団だった」と指摘します。体の鍛練や我慢のみならず先輩の質問に後輩が問答を繰り返すケーススタディが行われていたそうです。理念的な模範解答(暗唱した正解)を答えるだけでは許されず、実践的な現実に則した具体的な答えを出すまで問答は続けられました。この学びから、理念と現実を見据えたリーダーが育ったというのです。

進歩している現代には科学的知識による効率よい教育をと考える人もいるでしょうが、地域の環境に根ざした教育は、地域の実情に応じて永年磨かれたものでした。別の例として、昭和40年代ロシアの格闘技サンボで41連勝したビクトル古賀(正一)という世界チャンピオンがいます。彼の人生が本当に輝いたのは、なんと11歳の頃だったそうです。

戦前の満州で日本人の父親とロシアの半農半兵のコサックの母親の子として育った彼は、幼少の時からコサックとして教育を受け6歳から馬に乗りナイフやパチンコを扱い、年長者から自然の読み方を学びます。いつも笑って話し好き、体を動かし落ち着かない彼は日本の学校教育にはなじめなかったようです。10歳の時日本は戦争に敗れ、親族から引揚げ団に預けられた彼は列車で1000キロ離れた父親の故郷九州をめざします。ところが、ハーフであった彼に反感を抱いた大人達にその日のうちに身ぐるみはがれて、引揚げ団から追い出されてしまいます。

地図も食料も持たない10歳の少年は、しかし700キロ以上を2ヶ月以上歩いて引揚げ船の出る錦州市にたどり着きます。この旅が人生でもっとも楽しかった経験だったそうです。彼は、決して日本の大人の判断(弱者を叱咤激励し、線路際の道を歩く等)には盲従せず、コサックの自然環境に合わせた実践教育と人間観察と宗教的感謝に基づく精神の安定から、危機を乗り切りました。そして引揚げ時の日本人の大人の行動を振り返って「日本人ってとても弱い民族ですよ。打たれ弱い、自由に弱い、独りに弱い。誰かが助けてくれるのを待っていて、そのあげく気落ちしてパニックになる。」と観察しています。

これからの少子高齢化時代は、今までの大人が未体験の時代です。働き方や社会制度も変わっていく時代でしょうから、環境に磨かれた教育が間に合わなくなります。二つの事例が示しているのは、自分で考える力を持つトレーナー(先輩)について自分で考え判断するトレーニングを続ける学び方が、未知に適応する道ということかも知れません。 (岩崎)

 

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