テーマ:コラム

 去る9月12日に行われた朝日大学公開講座から、岩手県の紫波町という人口約3万3000人の小さな町で補助金に頼らない地域活性化のお手本となっている、オガールプロジェクトを成功させた岡崎正信氏の強烈な講演を取り上げます。

 岡崎氏は、大学卒業後に地域振興整備公団に入り、建設省都市政策課に出向。中心市街地活性化法の制定に関わられました。当時はこれが正義だと思って作った法律だったが、多額の税金が全国の都市にばらまかれたが市街地は良くならなかった。自分が関わった法律では市街地活性化には結びつかないことに気が付いたのは公団を退職し、民間の仕事を始めてからだとおっしゃいます。

 父親が亡くなり家業を継ぐために紫波町に帰郷。町の中心市街地が疲弊していた、自分がやってきたことは何だったのかと、自分の間違いに初めて気付いた。自分が生まれ育った町では同じ間違いを起こさないと、34歳の時に1年半をかけて毎週金土曜に1泊2日で東京の大学院に通い勉強、経済学的な街づくりを学び直した。自分が建設省でやってきたことは、街の中心に商業施設を作り集客をしようと考えた。しかし、世の中はインターネットによる通販の時代。商業を中心とした市街地だけでは負けてしまうと、まったく異なる手法で手掛けたのが紫波町のオガールプロジェクト。

 昔の商店街は、味噌醤油の工場があり、酒蔵があり、鉄工所があったりと、町は製造業だった。町には多様性があって、働く場所があり、住む場所があった。この多様性が街の強みだったはずが、いつの間にか仕入物販になり敵が多く、脆弱になってしまった。

 紫波町の税収のピークだった平成10年に町のど真ん中の土地を借金して買った。それだけで金が無くなり、開発できない、何もできずに12年間ほったらかしにされた。その土地を活用し、補助金無しで建物を立てたのがオガールプロジェクト。建物はすべて木造で、これらは財政問題を解決するための手法、町の林業の活性化、農業の活性化、スポーツ合宿を誘致して、ここで職を支える

 もう一つのポイントは、官と民との「のり代」を最大にすること。オガールプラザは民間が作った公民館、この建物だけで年間75万人を集める。中心は図書館で蔵書数10万冊もないが、県内の貸出冊数ランキングで5位、来館者数で2位を誇る。ここには体育館もあって、この体育館も岡崎氏のもう一つの会社オガールベースの所有。全部借金で作った、世にも奇妙なバレーボール専用体育館。物を作るにはお金が必要で、調達し、返済することが大切。これに補助金を使うと、返す必要がないからみんな頑張らない。このプロジェクトは金融機関がパートナーで、金融機関にこのプロジェクトがきちんと儲かるかをチェックしてもらうという大切な機能を担当してもらった。巨大な公民館を建てるために、国の政策金融機関に出資をお願いし、それだけでは足りず地元の銀行に融資をお願いし、それらのお金で建物を立てた。町の土地に建てたので、地代と固定資産税を支払っている。町営図書館は、建物を立て什器・備品を揃え、完成した時点で紫波町に売却した。だから、オガールプラザは会社と紫波町が区分所有となっている。町はプラザが支払う地代と固定資産税で図書館の運営を行っている。

 そして、図書館に同居する9件のテナントを募集したところ40社もの企業が応募、ここが大事。商業中心ではなく、図書館というSS級の集客力のある公共施設に商業を同居させる。商業中心ではなく、普遍的な集客を呼ぶことが必要で、間違っても美術館ではダメ。美術館なら火葬場の方がよい、いつかは必ず来ますからと。

 そしてテナントとして選んだのは病院、産直市場、そして居酒屋。図書館の中に居酒屋かと皆から馬鹿かと言われたが。家賃12万円で、その居酒屋売り上げが月600万円。オープン以来、テナントは常に入居率100%、紫波町は地主の責任を果たし、地元が潤い、お客が集まる。

 現在、国の公共事業費は約6兆円。あと数年で公共事業費は枯渇する。確実に、地方交付税は減額され、消費税は上がり、市町村の財政に冬が来る。自治体が潰れ始め、人は流出。北海道の夕張市の例を見れば12年前に破たんして、過去10年間人口流出率は今でも全国No1。地方交付税が削られる中で経営ができていけるかが問題。地方創生は人口を増やすことではなく、財政を立て直した地域が地方創生に成功した地域だと考えるべきだと岡崎氏は主張します。

 財政再建に役所の人たちはコストカットに走るが、コストカットでは「経費ゼロ」にならない。残念ながら役所には「稼ぐプロ」はいない、税金を再配分するプロはいても、稼ぐプロがいない。だから公民連携なのだ。民間に稼がせろ、そういう発想で自治体を経営しなければいけない。

 ここから以後に話すことを真似してください、パクッテください。と岡崎氏は言います。

 街の中心に作る大事なことは、おいしいワインが飲めて、おいしいコーヒーが飲めて、すごく高い自転車に乗っているおやじ達がいっぱいいて、オーガニックな食材に溢れた、グッドレストラン、グッドバーがあること。建設省で都市活性化を考えている時にこんなことは一つも考えなかった。

 お酒やコーヒーにこだわりを持った人がいる地域は豊だ。自転車やボルダリングなど、自分の体に良いことをしていると思うことが幸せを感じる大事なこと。こういうコンテンツを作ってくれる若者たちに空いている不動産を貸し与え、新しいことをさせてあげる。若い人の失敗を許してやって、ちょっとだけチャンスを与えてあげることが大切だと言います。

 間違えてほしくないのは、自分たちの経験値から飛び出すことをクリエイティブと考えている人がいるが、これは間違い。自分達の経験値の端っこ、経験値のエッジに立って、一歩踏み出すことこそクリエイティブの本質だと言います。

 皆さんの町がやってきたこと、それの縁に立って一歩だけ踏み出したところにビジネスがある。たった一歩です。空を飛んではダメ、勘違いをしてはいけません、皆さんは空を飛べないし、ウルトラマンも仮面ライダーもいません。

 もう一つ、公共施設の集客力をビジネスにつなげてください。公共施設は人が集まるのです。第三セクターや財団法人ではなく、若い人たちにその場所を提供してビジネスをさせてください。公民連携は税収を増加させるために行うのであって、役所は民間に今以上に稼がせる努力をすることが公民連携です。市民のパブリックマインドは、地域のためにたくさん稼いで、たくさん税金を納税することです。

 私はこれで帰ります、皆さんお元気で。と言い残して岡崎氏はパッと帰ってしまいました。

 以上が岡崎氏講演の概略ですが、紫波町の公民連携が成功できたのは、町長が民間に稼がせなければ紫波町の活性化ができないと判断し、その上岡崎氏の会社には仕事をさせない(儲けさせない)と断言して民間人の岡崎氏に任せたことです。

 この話を聞いた、ある市の担当者は、普通の町では公民連携は、公民癒着と紙一重で、これを恐れて踏み出せませんといって溜息をつきました。私はその担当者に、だったら公と民の間に利害関係のない大学を挟んで、公学民の連携で考えれば、大学が知識と癒着を防ぐバリアの2つの役目を担って、地域活性化を加速させますよと提案させてもらいました。 (田村)

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