テーマ:コラム

 一般的には植物は動かないし頭脳が無いから考えていないと思われています。しかし、最近の研究で頭脳を持たない細菌(粘菌)を迷路の入り口に置き、出口に餌となる物質を置いておくとほぼ最短ルートで迷路を通過して餌にたどり着くことや、定期的な温度変化などのストレスに対して防御行動をとることも明かされ、記憶していることも実証されています。

 地球上に生命が誕生し、原始的な細菌の様な生命を共通の祖先として進化し、多様な細菌類やバクテリア、プランクトン、そして植物や動物などへと進化してきたと考えられています。細菌から見れば植物と動物が枝分かれして別々の進化を始めた時期は、長い地球の歴史の上ではつい最近の出来事と言えます。

 原始に近い細菌が思考力と記憶力を持っていることが実証されたのですから、遥かに高度な生物である植物が思考力や記憶力、そして行動心理を持っていても不思議ではないと考えるのです。

 私の専門であるマーケティングでとても重要なことは人間の行動心理を知ることです。なぜ人間はある行動をとるのか、その行動は学習によって得た知識によって行動しているのか、それとも誰にも教えられないのに行動してしまうのか、この事を知りたいと思った場合どのようにして調べるのでしょう。この解決方法が現在では容易にできるようになりました。教育を受ける前の赤ちゃんの行動や脳内の血流量の変化を測定することで解明できるのですが、近年この分野の研究は飛躍的に進みました。赤ちゃんだけでなく、サルやその他の動物の行動心理についても多くの研究成果が発表されるようになりました。

 人間は親しい家族同士なら肌が触れ合うほど接近しても不快とは思いませんが、他人同士はこれ以上近づいて欲しくないパーソナルスペース(対人距離)と呼ばれる縄張りの様なエリアを持っています。一般的に女性よりも男性の方がこのエリアは広いと考えられ、文化や民族によって差があることが知られています。

 実は植物にもこのパーソナルスペースが存在するのです。うっそうと木々が密集している森の中でも隣接する木同士の間には必ずスペースが開いているのです。しかし、このパーソナルスペースを持たない例外の木があります。日本人の代表的な植物であるソメイヨシノ桜の木です。人工的に接ぎ木で栽培されたソメイヨシノは行ってみればクローンなのです。種から栽培された木は1本1本遺伝子が異なるので隣の木と区別がつくので、人間と同じようにパーソナルスペースを作ります。しかし、接ぎ木で作られた木はコピーですから遺伝子も同じなのです。遺伝子が同じ桜は自分と隣の木との区別ができないために、隣同士が触れ合うほどに接近した桜のトンネルが出来上がるのだそうです。そのために過度に密集して太陽光が遮られるために桜並木の寿命は短くなると言われています。

 同様にやぶきた種といわれる日本茶の木も接ぎ木で作られたクローンなので隣同士の木がくっついて直線状に並んだ状態でお茶畑を作ることができるのです。

 隣り合う植物同士も動物とは異なる方法でコミュニケーションをとっている一例です。 (田村)

 

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