テーマ:コラム

 

 

 大学でどう学んでいるかを知ってもらうために、これから何回かゼミをライブ配信してみます。最近のNHKスペシャル「マネーワールド 資本主義の未来 第2回仕事がなくなる!?」では、AIの進出と共にロボットが進化し、飲食サービス業、物流、工場労働、銀行員等の人間の仕事がなくなった現場を映し出していました。AIによりお金の流れが遮断されれば資本家は労働者を不要とし、金持ちと貧乏人の差がますます広がるのではないかという爆笑問題のつっこみに対し、ソフトバンクの孫正義氏は悲観していても仕方なく、AI化をチャンスと考えまず前向きに攻めの姿勢をとり、勝ったところが対策を講ずるべきと応えました。一方、AIの実験をしている新井紀子氏は気持ちの問題への置換えはずるい、AI化の流れでメリットを得ている人が問題に対応し、職がない人に一定のお金を配るベーシックインカム制度を法人税やロボット税を財源に導入すべきと主張しました。

 すぐ明日の話ですから学生も真剣です。NHKが得意な映像と二元論とのコラボの説得力は強烈かつ扇情的ですが、これから何回かのゼミで自分たちの頭で考えてもらい、大学生らしく批判的に論拠をつめて(できればこの番組の欺瞞を暴いて)みましょう。まずは思考実験から始めます。どこから手をつけるか分からない問題は、自分の具体的な問題として考えるのが一番です。そこでテーマは、「(たとえばスポーツで)自分とまったく同じ能力を持つAIと対戦して勝つにはどうしたらよいか?」。事前に新井氏の著書を読んでいたので、指摘していたAIの弱点(統計学的に可能性の高い回答を見つけるのは得意だが、言葉の概念や文脈を理解するのは苦手)を活かせないかと考えてもらいました。

 学生は「ターミネーター」を想像したのか最初は絶対無理と言っていましたが、どんな手でもいいと促すと、「感情むき出しで戦う」というアイデアがでました。AIなら容易に弱点を突いてくると否定的な意見をぐっとがまんして、誰かが冷静さを失わなければ実際の試合でもアドレナリンがでて実力以上の力を発揮できることがあると言い出しました。すると違う学生がアイデアをかぶせ出します。AIのレベルが変わらないうちに練習量を増やす。それでは時間が足りないから、自分を分析して弱みを直す。いやいや、統計的な予想を崩せばいいから、あえていつもは自分がやらないことをする、等次々出ます。

 面白いのでサッカーのような団体競技ならどう? と問を拡張してみました。全員の意思統一で勢いにのるとの意見には、みなスポーツで経験があり大きな賛同が起きました。感情、仲間意識、チームワーク、コミュニケーションによる共通認識は勢いを生み、言葉の概念や文脈を理解するのが苦手なAIには対応できないかも知れません。大坂なおみのように選手以外のトレーナー等のサポートチームを持つや、予想外の事態を起こしそれにアイコンタクト等で今の自分たちより良いプレーをする等、次々アイデアがでます。番組を見た直後のドヨンとした空気が消え、未来からの挑戦を受ける心構えができたところで次回から一つずつ事実を検証していく予定です。 (岩崎)

PAGETOP