テーマ:コラム

 

 前回学生の分析は、「今のAI」の中に入っているこびと部分=人手の方が機械より安く対応できる部分は人の仕事として残るが、面白味はないとの結論でした。そこで、ちょっとAIそのものから離れ、ネットビジネスが成長しているフリマ市場で既存のビジネスがどのように戦っているかを調べました。メルカリの6月期の売上は約360億円、既存上場企業に比べると小さく見えますが、前年度比62%増と急成長していますし、国内での営業利益率は20%を超えています。多くの売り手と買い手をICTでつなぎ、しかも買い手からの代金が先に手にはいる市場作りはこれからAIが最も活躍すると思われる土俵です。

 このような強敵に対し、従来の中古専門業者ハードオフでは持込対象品に複数の店舗の専門家が入札しより高く買い取る方式を打ち出し、ソフマップでは買い取った機器のデータを完全に消去する安心できる取引を発表しました。つまり、専門家によるより論理化できない目利きと、個人が不安に感じる機密保持が守れる信頼性を打ち出したのです。

 学生と調べていくと、これまたAIと相性のよいアマゾンのような大量の商品と大量の情報を提示するEコマースに対して、ブロガーやユーチューバーのような個人がリアルタイム動画配信を通じ推薦する商品を販売するライブコマースという手法が見つかりました。中には、特定の専門店をバイリンガルの中国人が訪れ、リアルタイム動画を見ている中国からチャットに表示される複数の質問を店に直接聞き、視聴者が気に入れば日本の一点もの商品をその場で買って中国に発送するようなサービスもあります。テレビ通販を個人でやるようなものですが、フォロワーが集まれば啖呵売のような賑やかさがでて、消費者の購買意欲をEコマース以上にくすぐります。口上をつけると舞台と同じく複数人とのコミュニケーションが可能です。人となりが直接伝わることで信頼を得やすく、情感を刺激する話し方等の表現が売り手の親しみを増し、取引が単なるEコマースより円滑になります。

ここまででAIの弱点が少し見えてきました。①自分のビジネスについての論理で説明しづらい暗黙知的な専門知識を持ち、②信頼を得られる取引実績や社会の基盤があり、③感情を含む共感を伴う盛り上がる対話ができれば、仕事の上でAIに対抗でき、かつ仕事自体も面白くなりそうです。以前議論した自分AIと戦う思考実験とも矛盾しません。

 逆説的ですが、AI後の社会を個人として人間らしく生きるためには、実践から磨いた論理化できない深い専門知識だけでなく、社会的な信頼や他者と相互に影響を与え合う自分に適したつながり方を見つけておくことが大切なようです。仲間と共に一歩深く考えて見つかった結論は、専門性という人的資本と、関係性という社会資本がますます重要な時代に入ろうとしているのではないか、ということでした。就職活動でもこのような専門性、関係性を可視化する時代はすでに始まっているようですが…それはまた別の話。 (岩崎)

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