テーマ:コラム

 

 「ロード・オブ・ザ・リング」や「ゲーム・オブ・スローンズ」といった海外ファンタジーが好きな人も多いでしょうが、これらは結構英国の戦国時代である100年戦争やバラ戦争の歴史にヒントを多く得ています。そこで前回の夏休みの冒険のついでに、海外の歴史大河ドラマも楽しんでみました。日本のNHKと同じく英国のBBCは歴史ドラマが得意です。そして英国には1600年前後にその200年前の英国王の歴史を9本の芝居に書き上げた大作家シェイクスピアがいます。BBCはこれらを編集してロンドンオリンピック記念の大作ドラマを作っています。日本の大河とはアクションの規模が違います。

 この中でリチャード三世は自分の身体的ハンデをひがみ、敵対者や身内を次々と暗殺した希代の悪人として描かれていますが、その冷徹さは真田昌幸の奸計の比ではありません。こういうドラマを見ると日本人はやっぱり草食人種だなあ、なんて感じてしまいます。しかし、歴史的には実際のリチャード3世が劇のような人物であったかは分かっておらずむしろ勤勉で公正な王であったという説もあります。シェイクスピアは真実よりも人間の類型としての登場人物を彼の時代の要請に応じて追求しました。

 ただ実際の歴史も学んでみると、事実として英国の戦国時代は極めて長かったことが分かります。ローマ帝国が引き揚げた400年代前半から、シェイクスピアが芝居を書いたエリザベス1世の1600年頃まで、海外からの侵略者や誰が味方で誰が敵になるかわからない戦争が1200年も続いていました。日本の戦国時代150年に比べるととてつもなく長く、シェイクスピアが書いたように現実的に生きざるを得なかった人たちがいてもおかしくなく思えます。ではなぜ英国の戦乱が長く続いたのか。世界史の授業を思い出してみると英国は大陸の西ヨーロッパ諸国より王権が強く、それを制限するため議会が誕生したと習いました。王が強いのなら、内乱状態が長く続いたのは奇妙に思えます。

ヨーロッパではで王とそれ以外の豪族や騎士が戦闘協力について自由な契約を結び(従士制)、あわせて領地を与える(恩貸地)ことになっていました。契約ですから絶対服従ではなく王が約束を守らなければ領主や騎士は離れていきます。日本の室町幕府と武士はこの関係に似ています。これが長年続くと複数の王に仕える領主も生まれ領地争いが恒常化したのですが、英国は1066年に大陸から来たノルマン人の王ウイリアム1世に征服されて土地の権利が奪われ、功績のあったノルマン人に分配されなおします。これを受けて王権が強いと習ったわけです。しかし占領された元の豪族も黙っていません。王からの課税の申し出を争いによらず解決するため議会の原型が生まれます。併せてフランスに比べると王の子孫が途絶えることも多く、血縁の中から王に名乗りを上げる者もでて、これも議会で議論することになりました。王の正統性や課税に不満があれば内乱で解決することを繰り返しそれが長引く戦乱を呼び、同時に議会制度も発達していきました。

多くの血を流して、土地の所有権=帳簿と課税=収入の正当性が磨かれ、ガバナンスの原則が確立されてきたものであることは、現代の経営でも忘れてはいけません。(岩崎)

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